発泡ウレタン

私の会社には、使いそうなもの、使わなそうなもの、その他雑多なものがたくさん置かれている。
塗装会社なので、主にそれに関係したものが置かれているのだが、中にはいつ使ったのか分からない物まで置いてある。

その一つに、”発泡ウレタン”というものがある。

今日は、この発泡ウレタンと私の後輩、Dの助が巻き起こした騒動について話そうと思う。

ある昼下がり。
私と先輩のマザファカさん、そして後輩のDの助の三人は、午前中で仕事を終え、会社に帰ってきていた。

特に行く現場も無く、とりあえず会社の倉庫を綺麗にしようということになった。

なんとなくボーっと汚ったねぇ棚を眺めていたら、あるものが見当たった。

それが上述のこれ。
その名も”発泡ウレタン”。

これは主に断熱部の補修用として使われる。
スプレーみたいに吹きかけると、もこもこ膨らんでイイ感じになるというやつだ。

説明がクソだるいので各自wikiでも読んでほしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E6%B3%A1%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF

ほらよ。

なんの気なしにそれを手に取る私。

「(こんなもん何に使うんやろ…)」

「金丸さん、それ何っすか?」

唐突にDの助が聞いてくる。
いつの間に居たんだろうこいつ。

「これ?おもろいよこれ、膨らむやつ」

「マジッすか?見てみたいんすけど」

「でもこれ詰まってて出ないよ」

ノズルの部分が折れてる上に、そこにウレタンが詰まっていて出なくなっていた。
使わなくなって長いこと経つのだろう。

発泡ウレタンをDの助に手渡し、あたりを見渡すと、錐が目に入った。
もしかしたらこれでほじくれば出てくるかもしれない。

「これで開けてみ」

「あ、いいっすねこれ」

言われるがままに錐でノズルの先端をほじくるDの助。
しばらくして、私の予想とは斜め上を行く出方で発泡ウレタンが出てきた。

もっと噴射しながら出ると思ったが、古くなっているのかシェービングクリームみたいな出方をする。
きもかった。

「これナイロン敷いてもっと出してみたいっすね」

どうやらDの助はハマったようだった。
いそいそとナイロンを用意し、そこに向かってノズルを押し付ける。
へんな黄色いクリーム状のものがドバドバと噴出される様は見ていて少し面白かったが、そこまでエキサイティングなものではなかった。

飽きた私は車に戻り、必要のない荷物を降ろそうとした。

その時だった。

「金丸さん…!止まらんくなったんすけど!!」

エッ?

急いで見に行く私。
見ると、絶妙なぐあいでニュルニュルと出続ける発泡ウレタンの姿があった。

「うわぁぁあキモッ!」

「どうすればいいんすか!?どうすればいいんすか?!」

知らない。
こっちだって想定の範囲外のことなんだよ。
ちなみにそれ以上関わるのはごめんだぜ。

処理方法についていろいろ案を出し合ったが、「結局隠しても射出音でみんなにバレる」ことが判明し、私たち二人は頭を抱えた。

そうこうしているうちに、段ボールを捨てに行っていた先輩のマザファカさんが帰ってきた。

「マザファカさん…これ見てくださいよ…」

「お前ら何やってんの?それ、ケツに穴開けてガス抜けよ」

正直私もその方法は思いついていたが、メッチャ噴出するんじゃないかと思って怖くて実行できなかったのだ。
しかし、マザファカさんの後押しがあれば問題ない。

私とDの助は、会社の外にあるごみコンテナまで発泡ウレタンを持って行った。
缶の底に錐を突き立てる。
ハンマーで一発、軽めに叩く。

次の瞬間だった。

(イメージ)

ドシュゥウウウウウゥゥウウウウゥゥウ!!!!!!!!!

エェエエェエ!?!?!!

思ったより出た。
メッチャ出た。

そしてメチャクチャ笑った。

あるうららかな春の日の午後、三人の笑い声がいつまでもこだましていた。

(ちなみにごみコンテナのすぐ横には、事務員の人の自車ベンツが停まっていた)