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出会い系のサクラにガッツリ騙された話

みなさんは出会い系サイトというのを利用したことはあるだろうか。
私はクソほどモテなかった(今でも嫁以外の女性からは全く相手にされない)10代の頃、一度だけ利用したことがある。
最近だとマッチングアプリなんかもあるらしくて、昔ほどそれらが敬遠される雰囲気は薄らいでいるように思う。

 

これは、まだガラケーとmixiが主流だった頃、私が18歳の時の話。

 

1.退屈

私は運転免許を取得するために、少し離れた街にある教習所へ合宿に来ていた。
3週間ほど寮で寝泊まりしつつ、学科や実技試験を受けるというスタイルだ。
昼飯と晩飯が付き、約30名ほどと寝食を共にする。
部屋はそれぞれ個室が与えられ、中には風呂もテレビもあってかなり充実している。

私は1人になると無口で消極的な方なので、友達を作ろうとか楽しもうとかいう気持ちは一切無かった。
ただとにかくさっさと免許を取って帰ろう、それしか考えていなかった。

が、いざ入校すると、高校の時の友達とバッタリ出くわしてしまったため、寮生活をエンジョイせざるを得なくなってしまった。
1人静かに過ごすつもりだった私は若干げんなりしたが、まぁ暇よりは良いだろうと思って受け入れることにした。

しかし、この高校の同級生、塩ソルトくんはそう思っていなかったようだ。
もともとリア充に強い憧れを持っていた彼は、すすんでいろんな奴に話しかけていた。
結果、バカでアホのセンターN、変な色気を持ったハードS兄さん、顔は可愛いけど身体がデカいチー姉さん、ガチムチの塩ソルトくん、ダッセェメガネの金丸というクッソチグハグなサークルが出来上がってしまった。
塩ソルトくんは満足だったろうが、私にしてみればたまったものではない。
なので、飯とかの時間以外は極力部屋に引きこもるようにしていた。

 

が、これがいけなかった。

 

部屋にこもり勉強、たまにハードS兄さんと喋り、アホのセンターNが夜な夜な部屋に押しかけてくるのをかわしたりしながら授業を受ける。
ひたすら単調でパンチに欠ける毎日。
退屈がこの世で一番嫌いな私は、もはや発狂寸前にまで追い込まれていた。
ここでチー姉さんとのロマンスでもあれば退屈を呪うこともなかったろうが、私にはそんな勇気も度量もない。
というかチー姉さんはハードS兄さんとくっ付けばいいと思っていた。
お互い年も近いし。

ノートパソコンでも持ってきていれば退屈しのぎになったろうが、当時の私はそんなハイテクなものは持っていなかった。
そこで部屋に引きこもっている間は、ずっとケータイをいじって過ごしていた。

冒頭でも少し触れたが、当時はmixiというSNSが幅を利かせていた。
例によって私もmixiをやっており、チョコマカとしょーもない文章を身内に発信していた。
それでも暇だった私は、ついに禁断の一手に出てしまう。

 

「どうせ1人なら…出会い系サイト使ってみようかな…」

 

これが悪夢の始まりだった。

 

2.高揚

無駄にサクッと登録を済ませ、耳触りの良い文言を羅列したプロフィールを書く。
写真は何枚も撮りまくり、自分が一番イケていると思う角度のものをチョイスした。
目線は合わせず、右斜め上から撮ったもの。

 

…今当時の自分が目の前に居たらどうするかって?

 

 

 

 

 

 

 

殺すに決まってんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

それから女性のプロフィールを色々巡回した。
今思えばやけに美人が多かったし、もうサクラまみれのサイトだったのだろう。
しかし当時の私がそんなことを知る訳もない。

 

「うわやっべ美人ばっかじゃん…これ選り取り見取りッスかぁ…?しのびねぇな…しのびねぇ…」

 

ん?当時の自分が?目の前に居たらどうするかって?

 

 

 

 

 

 

 

ブチ殺すに決まってんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

鼻の下を伸ばしまくりながら女性のプロフィールを堪能した後、私は妙な高揚感に包まれたまま就寝した。
ベッドの中でありとあらゆる妄想をしながら、半ニヤケのまま夢の世界へ。

 

当時の自分が目の前に居たらモチロン刺すよ。

 

—▼—

 

出会い系サイト登録から数日。
相変わらず女性のプロフィールを見るばかりで一向にメールを出さない私だったが、ここに来てあることに気づく。

 

「…?!メール来とるやん…」

 

受信箱に”(1)”の文字。
私は自分の心拍数が一気に上がるのを感じた。

震える手でボタンを押し、メールをチェックする。

 


はじめまして☆
プロフみて連絡しました^-^
住所も近いのでよかったらメールしませんか?
返事待ってますミ☆

 

大体こんな感じの文章だったと思う。
メールの最後には、メチャクチャ美人な女性の写真が貼られていた。

 

「やべぇよ…やべぇ…」

 

心臓が今までに無いくらい高鳴るのを感じた。
私は深呼吸しながら、一言一句最新の注意を払って文章を打った。

 

こんばんは^-^
メールありがとうございます(^^)
イケメンでも無いですが、仲良くしてくれたら嬉しいです(笑)。
よろしくお願いします!

 

 

 

 

 

 

 

 

すいませんちょっといいですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ~~~~~!!
コイツ殺してぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!

 

 

 

 

 

 

すいませんちょっとストレスがやばくて。
続けます。

 

それからなんやかんやメールのやり取りをした後、相手が切り出してきた。

 

よかったら実際に会って遊びませんか?^-^

 

私のテンションは過去最高潮に上がった。

 

「ギヒヒ…会ったら車内で…クックック…」

 

私はあれこれと妄想を巡らせ、当日を待つことにした。

 

3.狼狽

相変わらずパンチに欠ける毎日を送りながら、出会い系サイトで時間をつぶす日々。
超美人の女性とも会う約束を取り付け、私は気分上々だった。

しかし、”それ”は突然訪れた。

 

「あれっ?メールが送れない…なんで?」

 

ある日の深夜、会う約束をした女性にメールを送ろうとしたところ、“ポイントが不足しています”の文言が出現し、メールを送れなくなってしまった。

このサイトはメールの送信、およびプロフィールの閲覧に際してポイントを消費するシステムになっており、初回はタダでいくらか貰えるが、そこから先は課金してポイントを買うようになっていた。

 

「クソッ…!どうする…?」

 

モタモタしている間にもジャンジャン女性からのメールが届く。

 

どうしたの?急に返信くれなくなっちゃった…。

飽きたのかな?違う人に行っちゃった?

寂しい…

 

怒涛のメール狼狽した私は、気づけば部屋を飛び出していた。

 

徒歩で10分ほど歩くとコンビニがある。
そこでとりあえず5,000円入金し、ポイントを買ってメールを返信しよう。
そう考えたのだった。

ちなみに、消灯時間を過ぎてから寮を出るのはご法度だ。
バレれば普通に怒られる。
しかし、私はそれもいとわなかった。
ただ、メールを返信したい。その一心だけが、私の足を前へ前へと動かした。

 

街灯もまばらな夜の道をひたすら走る。
汗が首をつたい、胸元を通って、腹を濡らす。
息が詰まり、タンが絡んでも、私は歩を緩めなかった。

メールをチェックすると、また新しく受信があった。

 

私…飽きられちゃったのかな?

でも…まだ…あきらめたくないよ?

 

私はケータイを乱暴にポケットに突っ込んで、また走り出した。

汗だくのままコンビニに入店する。
震える手でATMへ向かい、入金する。
なんとなくあんパンを一つだけ買う。
食べながら帰路につく。

 

私は得も言われぬ満足感に浸りながら、星空を眺めたりなんかしながら歩いた。
これでメールを返すことが出来る。
あの人に会える。
いろんなことが出来る。

私は有頂天だった。

 

4.報い

寮に帰ると、寮長が玄関で待ち構えていた。

 

「…おい、お前どこ行ってたんだ?夜は出ちゃいけないっつっただろ?」

「ア…お腹空いて…コンビニ行ってました…」

「…は?コンビニ?!馬鹿かお前!?さっさと寝ろ!!」

「スイマセン…」

「アホ!」

 

結構でかい声で怒鳴られたので、私は他の人が起きたらたまらないと足早に自分の部屋に戻った。

 

何はともあれこれで万事OKだ。
あとは待ち合わせ当日を待つのみになった。

私は汗だくの身体のままベッドに横たわり、そのまま眠った。

 

—▼—

 

翌朝、起きて朝食を食べながらハードS兄さんと話していたら、唐突に「昨日、脱走事件あったらしいよ」と聞かされ、心臓が止まりかけた。
だって自分のことだし。

そんなことよりも、今日は約束の日だ。
同じメールを何度も何度も読み返し、日付をチェックしたから間違いない。

 

今日夜8時に、最寄りの駅で女性と会う。

 

私は緊張感と高揚感の入り混じった、意味不明なテンションを押し殺しながら一日を過ごした。
正直行って授業はあんまり頭に入らなかった。

それどころか、約束の時間が近づくにつれて、今までに経験したことの無い胃痛に襲われた。
ハッキリと分かる、緊張性の胃痛。
マジで冷汗が出てくるレベルの胃痛で、私は居てもたってもいられずアホのセンターNに助けを求めた。

 

「腹痛い…助けて…」

「大丈夫か?良かったらこれ飲めよ、胃薬だから」

「ありがとう…」

「…あ~あ、飲んだな。それ下剤だから」

「は?」

「…いや…嘘」

「(なんだコイツ?)」

 

紆余曲折を経て、ついに約束の時間が来た。
私はできるだけ綺麗な恰好をして、意気揚々と寮を出発した。

 

5.懺悔

結論から言おう。

誰も来なかった。

 

駅に着くと、遠くの方でヤンキーがメチャクチャ騒いでいた。
気分を台無しにされながら、私はヤンキーたちと離れた駐輪場で待つことにした。

 

 

 

約束から十分経っても来ない。

 

 

 

二十分経っても来ない。

 

 

 

三十分。

 

 

 

ついに1時間。

 

 

 

メールでは「あれかな?!見える?」とか、「金丸くん、どこー?」とか来ていたが、一向にそれらしき女性は居ない。
強いて言うならヤンキーたちがこっちをチラチラ見ながら笑っているくらいだ。

あまりにも来ないし、ヤンキーたちはこっち見てるしで、途中から「おれはあのヤンキーたちにハメられたのではないか?」と思うほどだった。
んなわけねーだろ。

 

頭にポテサラが詰められているような私でもさすがに悟った。
これは俗にいうサクラというやつだと。
季節は夏だけど、これはサクラだと。

 

 

 

寮に帰ってから、そのサイトの口コミを見てみた。

 

「悪徳」

「業者だらけ」

「ゴミ」

 

こうして私は、三週間の間に何かを失い、また何かを得たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに仮免の試験は落ちた。

 

 

 

 

 

 

(おわり)

Published in ネタ 日記 荒れてた時期

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