11月の読書

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・ギ・ド・モーパッサン / 女の一生

修道院を出たばかりの無垢な少女、ジャンヌを主人公に、波乱に満ちた一個の『女性』を描いた作品。

めちゃくちゃ面白かった。とことんまで不幸になっていくジャンヌに追いつけない苛立ち、女性のカルマ、そういうものが凝縮されていて、一冊で十冊も読んだ気分になった。
女性というのは、男一人で幸福になることも、不幸になることもできる。それはいつの世も変わらない。ジャンヌが幸福になれず、不幸の裡にその生涯を終えることになったのは、ある意味当然であるとも言える。彼女は何もしていない。何もしていないから、不幸になった。それだけの生涯だった。

どれだけ悔しくとも、それが人生。それ以上でも以下でもない。不幸は不幸のまま、幸福は幸福のまま過ぎ去っていく。
ラストの台詞が印象的で、言葉に詰まった。

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・中島らも / 世界で一番美しい病気

夏に読んだ中島らもの再来。内容カブってるところもあったけど、基本読んでないものばっかりだったので良かった。
今回、爆笑まではいかなかったが、それなりに笑った。特に「モテてる奴への嫉妬」みたいなのには、共感した。モテてる奴全員地獄に落ちろ!!堕ちろって!!堕ちてください!!

あと、ファンの美少女を抱いた話で、中島のEDが発覚し、勃たないならせめてと丁寧な前戯によって彼女を満足させていたが、EDが治って男根がバキバキになって喜んでた矢先にフラれた話は意味わからなさすぎて笑った。女の子側がEDにしか興味の無い子だったというオチだったけど、そんな人本当に居るのか。

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・三島由紀夫 / 不道徳教育講座

クッソ面白かった一冊。三島独自のユーモラスな視点で、世の倫理観や道徳観をバッサバッサ切っていく痛快なエッセイ。
印象に残ったのは、「肉体的教養」とかいう造語。いっぱしの男が精神的教養を身に着けているのはもちろんだが、それと同様、太鼓腹を自慢げに叩いて見せるのを良しとしない肉体的教養も身に着けて然るべきだ、みたいな論。目から鱗だった。
他にも、「知らない男と酒場へ行け」だの、「弱いものはいじめろ」だの、「女は殴れ」だの、莫大な数の批判の投書が三島の元へ届けられたことが安易に想像できるものばっかりで最高だった。

*** *** ***

mzfkさんと一緒に仕事をしていると会話がメインになるので、あまり本が読めない。だから小説はあまり読めなかった。
家に帰ってからはモンハンに誘われたりするので、わずかな時間を見つけて読んだ感じ。

10月の読書

・トルストイ / 光あるうち光の中を歩め

敬虔なキリスト信者パンフィリウスと、俗世間にどっぷり浸かった豪商ユリウスの生涯を描き、トルストイの考える人間生活の完成系を示す1作。
作中でユリウスとパンフィリウスはしばしば邂逅し、そのたび互いの生活について議論する。パンフィリウスはキリスト教的生活が平等の精神に基づき実践されていることを説き、ユリウスはそうしたキリスト教的生活の欺瞞を暴き批判する。
ユリウスは何事かに失敗するたびに思い直し、何度もパンフィリウスの元へ足を運びかけるが、すんでのところで啓蒙に出会いまた俗世間へと帰っていく。最期はとうとう自らを止めるものを押しのけ、キリスト教のコミューン内でその生涯を終える。

面白かった。トルストイは非常にストイックな思想でもって、全人類がキリスト教的生活を送るべき、いや送らざるを得ないのだと説いている。しかしはっきり言って僕はそんなのごめんだ。だってセックスとかしたらだめらしいし。
幸福に生きることを理性のみで追及するのであれば、キリスト教的生活もまた良いだろう。でも僕は、抗えぬ欲望や魑魅魍魎の跋扈するこの世を常に身近に感じながら、それでいて幸福でありたい。そうした方法を模索している。よってトルストイのこの思想は却下。

・闇金ウシジマくん本

言わずと知れた裏社会漫画「闇金ウシジマくん」のすべてが集約された一冊。真鍋昌平氏のロングインタビューはもちろん、1ブロガーの非常に鋭い考察、イラスト寄稿など、内容てんこもり。

闇金ウシジマくんは、尋常ではない回数の取材を重ねることによって、写実以上のリアリティを作品の中に落とし込んでいる。ただ世にこうした事実があるということを書くだけの、話題性だけは一丁前なクソ漫画はこの世に多々あるが、ウシジマくんは事実や実在の事件を踏まえたうえで、そこに生きる人々を克明に描き出すことに成功している。まさしく執念の作品だと思う。

ウシジマくんは最後、ヤクザでも債務者でもない単なる通り魔にやられ、死ぬ。その際に救急車を呼ぶか聞かれた彼は「いや、いい」とだけ答え、大量に出血しながら路上で死ぬ。
ダークヒーローとして、いや闇に生きる1個の人間として、これほど理にかなった最期もないと思う。これにて僕の中での真鍋昌平のイメージは、「めっちゃセンスある人」になった。

・ケーキの切れない非行少年たち

「軽度知的障害」という言葉を初めて知った。これは一般社会に馴染めるか馴染めないか微妙なラインであり、また明確に知的障害として支援が受けられるかどうかも微妙という厄介な病気である。
殺人を起こす人間は根っからの悪人だと僕たちは考えているが、そうではなく、加害者は「なぜ自分が捕まったのか」理解できていない場合が多い。ただ周囲から猛省を促されるからそうしているまでで、自分のしたことの何が悪いのかが本気で理解できない。筆者は著書の中で何度も「反省以前の問題」という言い回しを使っていた。

この本は、いわゆる啓蒙書である。僕らのようなイメージだけで物事を見る、考える人間たちに真実を教え、目を覚ましてくれる良い本である。
筆者は決して軽度知的障碍者を迫害するのではなく、もっと多くの人がそうした事実を知るべきで、病気に対する支援を用意すべきであると主張している。
何度教えても仕事ができない人、誰でもできる簡単なことが出来ない人は、単にやる気がないとか馬鹿だとか言われて迫害されるが、そうした迫害は新たな殺人犯を生むパターンと化している場合が多い。
自分以外はどうでもいいという考え方は、遅効性の毒みたいに社会を殺していくのだとよく分かった。

・東京貧困女子。

パパ活を行う現役女子大生、手取り10数万円で、ランドセルや制服は団地内で回し着しなければいけないシングルマザー……あらゆる世代のあらゆる貧困を取り上げ、日本の社会システムのクソさを糾弾する一冊。

読んで落ち込んだ。ほんとに落ち込んだ。
本書に登場する人たちは、単に運が悪いだけであり、それ以外は至って普通かもしくは人より優秀である。
ルックス抜群、超難関国立大学在籍、にも関わらず、お金が足りず風俗で働いている人がザラにいる。理由は、片親だったり毒親だったり。
国の社会システムと言うのは、多少の貧富の差こそあれ、ある一定のボーダーを超えてしまわないように面倒を見るものなんではないかと僕は考えている。資本主義が行き過ぎて、お金を持っている奴はとことん強く、持っていない人はとことん弱い構図が露骨に出来上がってしまっている。
低級、中級、上級と国民がきれいに3分割されてしまい、相互間の意思疎通は敵わない。中級の人間は低級の人間を指さして「自己責任」と罵り、上級国民を羨望あるいは憎悪の目で見る。
上級国民はそもそも低級国民が存在していることすら知らず、中級には興味がないか駒として扱うのがせいぜい。あとは私腹を肥やすのみ。
低級はひたすら少ない賃金でこき使われ、支援も望めず、最終的に体を壊したりして死んでしまう。これが国というなら笑わせるな。

林田球 – 『ドロヘドロ』

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いつ、どんな経緯で読み始めたのかもう覚えてないが、林田球作「ドロヘドロ」を結構前に読み終えたのでその感想を。

あらすじ:
魔法によって顔面をカイマントカゲそっくりに変えられた男「カイマン」が、自分の記憶と顔を取り戻すため魔法使いたちの住む世界へと旅に出るダーク・ファンタジー作品。

作者の林田球曰く、ドロヘドロは「歌詞がメチャクチャダークで凶暴なのにメロディーは踊りたくなるくらい楽しい曲」から着想を得て描いたものらしい。
絵柄は好みが分かれそうだけど、僕は結構好きだと思った。林田球さんは女性の方らしく(滅多にメディア露出しない)、確かに女キャラとかはなんとなく少女漫画チックにも見える。
清潔なコマが一つもなく、だいたい全編にわたってみんな服が血とかドロとかで汚れている。なぜか新品の服を着ていても裾とかが汚れている。こういうのは世界観を影から引き立たせる役割を持っているんだろうか。
登場するキャラクターはみんな個性的で(所謂「主人公系」「やれやれ系」「清楚系」とかカテゴリー別に分けられてる感じでもなく、雑多としている)、このへんは「こういうの描くのが好きなんだろうなぁ」という気がした。
勢力図がしっかりとしているのはもちろん、どの勢力にも属さないモブみてーなキャラでもしっかりと個性が出ているのはすごいと思った。

反面、ストーリーの方は、少し頂けないなという感じがした。
一応、最終的な目標は「カイマンが顔と記憶を取り戻すこと」なんだけど、色々あって混沌としていく。
混沌とするのはまだいい。というか、はじめからそういう意図があったのは読んでいてすぐに気付いた。
でも、なんというか芯が定まってないまま、見切り発車で始めた感が否めなくて、混沌としているというよりはむしろ「行き当たりばったり」なイメージが強かった。事実、最終巻の巻末で作者自ら「途中で飽きちゃった」と記してたからあながち間違いではないと思う。一回19巻で終わらせると公言したけどそれも守れなかったし。
伏線も張ったぶんはきちんと回収してたけど、その回収の仕方も雑というか、しゃーなしやってる感が否めなかった。
後半の方になると無駄ゴマみたいのも増えてくるし、一枚絵の連続みたいなところもあって、漫画の持つ良さが活かされてないんじゃないかとちょっと不安になった。巻数が増えるにつれページ数もどんどん増していったし。最終巻なんて1巻の2.5倍くらいの厚みあったぞ。

ちなみに林田球さんは一枚絵を描くとクソ上手で、僕の大好きなゲーム「BloodBorne」海外版コミックの日本語翻訳版表紙を担当してたんだけどすごく良かった。

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ドロヘドロの感想は、総括すると「惜しい」だった。着想も良いし、絵柄も世界観も良いのに、ストーリーがちゃんとしてないせいで「なんかグロくてきたねー漫画」みたいな印象になってしまう。ストーリーって絵柄や世界観と同じくらい重要だと思うし。
現在、林田球さんは「大ダーク」という新連載を開始したそうなので、また単行本が出たら買おうかなと思う。

大ダーク

あらすじから漂うアングラ感とB級感がたまんね~。