世界を股にかけるクソ

僕の職場というのはかなりアバウトで、どの現場に行くかというのが当日の朝発覚するということが多々ある。
報連相のシステムが壊滅していて、みんな他人のことは知らんふり。ダルダルした雰囲気が会社を包み込んでいる。
今朝もそんな感じで、僕はどの現場に誰と行くか全くわからないまま出社してきた。7時ちょい過ぎくらい。すでに何人か出社してきていて、みんなめんどくさそうな顔をしていた。
僕はと言えば「寒っみ」と言いながらヒーターに当たり、みんなが動く姿を眺めていた。相変わらずどこの現場へ行けば良いのか分からない。
7時10分過ぎ。世界をまたにかけるクソ野郎が出社。相変わらず不愛想な顔でだるそうに指示を出す。とその時、
「オイおまえついてこい」
とだけ僕に言い、さっさと出ていこうとする。僕は思わず「え?」と聞き返すと、「だから、プロボックス乗って、ワシらの後についてこいって」とメチャクチャめんどくさそうに、こちらを振り向きもせず答えた。
いや準備もクソもしてねぇし。別に前日に言えとは言わないが、なんで出社してすぐに言わない?
で、車で付いていくが案の定20年前のヤンキーくらい飛ばす。自動車専用道路で、制限速度70kmのところを、120kmそこらでぶっ飛ばす。僕は現場の場所を知らないし、遅れるとまたネチネチとつまらん嫌味を言われるのがオチだから、頑張って付いていった。
完全に単なる嫌がらせだし、40の男が25の男に対してそれをやってるというのが、なんとも泣けてくる。コイツは40年間何を見て何を学んできたんだ?シンプルに頭おかしいのか?

現場に到着するも、雨。仕事できない。というわけで僕ともう一人、後輩のKくんはプロボックスに乗り込み、mzfkさんの現場に向かうことに。
車内では色々話したけれど、やっぱりKくんは可愛いところがある。自分の話をしたくてしたくて、でもそれをやるのはなんとなくかっこ悪いと自分の中では分かっていて、理性で無理やりブレーキをかける。彼はまだ20歳、その心の奥ゆかしさ(ある意味での幼稚さ)が、すごく愛しい。
「今年会社辞めるかもしれんッス」と、Kくんは言った。「もっといろんなことしたいんで」。
僕は言った。「うん、いいと思う」。僕はよほどのことが無ければ、人のことを否定はしない。それに、僕はKくんのこれからにそれほど興味があるわけでもない。そこで先輩風をふかして「辞めていいのか?」なんて、ださいこと言いたくない。
彼はきっと、自分は体当たりで学ぶしかないということをちゃんと心得ているんだと思う。本当は頭で考えて、あれこれ思案するのが賢いんだろうけど、自分にはそれができない。そういうのをちゃんとわかっていて、認めていて、実践している。立派なことだと思う。尊敬する。自分の生き方を認めることって、なかなかできることじゃないから。

仕事が済んでから、奥さんと一緒に奥さんの実家近くにある食堂へメシ食いに行った。昔ながらの味が売りの、地元民に愛されてる感じのところだ。
今のご時世、街道にはチェーン店ばっかりが目立つけれど、今でも生き残ってる個人店というのは軒並みレベルが高い。
『ゴールデンカムイ』で、土方歳三が言ってた。「この時代(日露戦争終結後)に老いぼれを見たら、生き残りと思え、小僧」って。なるほどと思うし、説得力もある。
僕は映画にしろ小説にしろ、作品に登場するキャラクターっていうのはジジィが好き。それもやつれてて、お前もう何もできることないだろみたいな無力感あふれるジジィが好きだ。ポテンシャルがあると思わせつつ実はマジで無い、みたいな。ただ痩せて枯れ果てた無口なジジィ。

そんな感じで人生って終わるのかな?

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