uri gagarn、それは沐浴

uri gagarnは不思議だ。揺蕩うようなリズムの中に、光芒のようなリリックが散りばめられている。視界の端に確かに映る焦燥感と、不安と、生活。
この感情や考察が、いずれ風化してしまっても思い出せるように、プレイリストにある7曲すべての考察を記しておく。

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1.Swim

タイトルが示す通り、これは「swim」。羊水の中を漂うようなメロディが、心を濡らす。ボーカルを務めるBunkyoこと佐藤くんのナードな歌声が、囁くように、でもどこか悲痛に、語りかけてくる。
BGMとして聞くのはあまりにも勿体ない名曲。目を閉じて、全身の力を抜いて聞きたい。

2.Gondola

歌詞が好き。「あゝずっとスマイルなの? 何を考えているの?」
前半と後半で曲調がガラリと一変する。
前半は、生活の雰囲気に溢れている。どこか静謐で、都市的で、愛とか希望とかそういうものとは一線を引いたある時点をトリミングしたかのごとく。
良く晴れた寒い日の朝、バスに揺られながら会社へ向かうあの人の顔とか、夏の昼下がり、陽炎の立つアスファルトの上を行くダンゴムシとか。それは本当に何でもない、生活、営み。

後半は、一気に音が重くなり、佐藤君の声もより悲痛になる。
「最低の日々より 落ちている」
uri gagarnにしては珍しく具体的なリリック。けれど、ニヒル。
ある時点から、前半の生活を回顧するような。
夜に、独りで、羽虫の舞う街灯の下とかで。酒でも片手に。
そうした気怠さに満ちている。

3.Wall

胃に響いてくるようなベースの音が印象的。それとは対照的な佐藤君の声が何とも言えず切ない。
「内面と対立 してる 安心の橋渡しを 蹴った」
具体性を避け、ちょっと引くぐらい抽象性にこだわるuri gagarnの美学が、ここに集結していると思う。
己との対峙。自分自身を俯瞰して、せせら笑ってやったり、慰めてやったりする人間の愛おしさと、憎らしさ。
ずっと存在感を失わないベースがメチャクチャかっこいい。

4.Owl

軽快なギターと手拍子と、頼もしいベースの音と、どこか間抜けな佐藤君の声。僕の大好きな曲の1つでもある。
MVは意味不明だが、見入ってしまう。これはある種精神世界の具現化みたいなもので、意味が分からないのは当然だし、また惹きこまれてしまうのも当然だと思う。
「おやすみ 最期の可能性 夢は 大抵落ちていく」
「エッセンス 取り合う」
「違う 違う」
夜通し語り明かすときの、言葉に出来ない空気感。それを音楽にしたら、きっとOwlになるのだろうと思う。
そしてニクいことに、この曲には夜明けが描かれていない。

5.Ijdb

マジでやることがない日曜日の午後、夏。詩にするでもないその生活の断片を、あえて詩的に昇華した一曲。
Ijdbというのは、「I just drink by」の略。ただ、呑んでる。
その気怠さを上手に捉えて音楽にしてしまうのがすごいし、感服する。ただ呑んでるだけが、こんなにかっこよくてどうすんだ?

6.Fly

都会の中で感じる焦燥感、不安。憤りと寂寞。
この曲には何度もシャウトが入る。諭すようなAメロ、Bメロ、そしてシャウト。
「霧の中を 指さして進む 口の中に 切り裂いて 喰われんぞ」
分からない奴等への警鐘のような、青春独特の苦々しさが感じられる。

7.Clearance

沐浴。警句のようでもあり、祝福のようでもあり。
聖歌のように、神秘的なリリックとメロディ。都会の人ごみの中にありながら、遠い異国の知らない森の、木々の隙間から光が零れているのを知っているような。それは想像力とかではなくて、産まれ落ちた人間の当然として。
「伝う 全身 投下 伝うな」
体に流れる血潮を感じ、それを慈しみ、生きてゆく人間を、祝福する一曲。

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uri gagarnが表現するものは、実はなんだかよく分からない。いくらでも後付けができるように思えるし、逆にまったくできないようにも思える。それはuri gagarnの楽曲のすべてが、紛うことなき音楽である証拠でもある。音楽はただ音楽であって、メロディに思想を載せて歌うものでは、決してない。音楽はただ音楽、だからその意味はイメージは、聴く人の数だけあり、あるいは1つしかなく、もしかしたら全然無い。

uri gagarnは、僕にそれを教えてくれた。

数字で読み解くnakayubiラジオ【1】

趣味でやってるラジオの拠点をstand.fmに移してはや1ヶ月半。
フォロワー数も順調に増え、再生数の伸びも悪くなく、レターもちょいちょい頂けるようになってきた。

放送数は16(※純粋な放送は15回)。もちろん、その日その日で再生数にはバラつきがある。
そこでこのバラつきの原因を探り、自分なりの考えを記録して、より質の高い放送を行えるよう、将来の糧にしようと思う。

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1. #7 Tinderとウーバーイーツの話 6分37秒(再生数:59)

公開した直後からモリモリと再生数が伸び、いまだにちょこちょこ伸び続けている回。メモを元に話の流れを見てみる。

まずはTinderの概要紹介。使ったことが無いから詳しくは分からないが、と前置きをしたうえで、「年頃の男女が肉欲を求めて登録する、いわゆるマッチングアプリ」と紹介する。
続いて、肉欲まで合理化してしまう人間の無邪気さを笑い、都会的な生活に対して「システマチックに過ぎる」と私見を述べる。
最期に、マッチングアプリで変な人に出会って事件に巻き込まれはしないかと危惧してこの話題は終了。

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考察。

Tinderの話題から『都会』にフォーカスし、ウーバーイーツの話題に切り替える。
地方都市に住んでいるからお目にかかることがないと自虐しつつ、概要の紹介。
都市生活に対する憧れと、個人的な愚痴を喋って終了。

この回で気を付けたことは、知らない事でも「ググらない」こと。Tinderもウーバーイーツも、自分の持っているだけの知識で話すように心がけた。その方が「会話している」感じが出ると思ったから。
次に、これははっきりと意図したわけではないが、大テーマと子テーマを設け、それぞれ大テーマを『都市生活』、子テーマを『Tinderとウーバーイーツ』にした。きちんと構成を考えたわけではないが、メモを見る限りなかなかよくまとまっているので、結構聞きやすかったのではないかと思う(放送時間も6分半といい時間にまとまっている)。
あと、これが一番でかいかもしれないけど、Tinderとウーバーイーツの流行性に乗っかった。Tinderは使ってる人が多そうだし、ウーバーイーツは先進的なサービスなので興味のある人が多いんじゃないかと思ったから。

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2. #12 モテる奴とモテねーやつの話 9分34秒 (再生数:54)

これも耳目を集めそうな話題だけあって、再生数の伸びが良かった。初コメントを頂くこともできた記念すべき回。
以下流れ。

世の中にはモテる奴とモテない奴の二種類が居る、という掴みから、僕は後者であると明言する。
社交辞令かナメてんのかは分からないが、僕を指してイケメンだとかモテそうだとか言ってくれる人は居て、しかし僕はそれを本気にしていないと述べる。
さらに続けて、そういう台詞は言われたい人にこそ言われないもんなんだ、クソが、と悪態をつく。
とはいえ絶望的にモテないわけじゃないから、努力のベクトルさえ間違わなければそれなりだし、みんなもそうでしょ?と提言してこの話題は終了。

「モテない奴」の話を切り上げ、話題を「モテる奴」にシフトする。
モテる奴はその自覚があるのであり、雄としての魅力が自分にあることが分かっている。
だから立ち居振る舞いが自然と洗練されてくるし、バレンタインデーとかにも普通にチョコがもらえる。
ここで話題を「モテない奴=僕」に転換し、モテない奴同士で傷をなめ合うみたいな、青春ドラマ的な展開は無く、ただただ感じ悪くなるだけだと話す。

次に「クソな男ほどモテる」論を展開する。
モテたい男はクズになれが頭をよぎったが、ああいう小うるさい話はラジオ向きじゃないと思ったので、「クソな男ほどモテるのは、理屈云々より肌で分かるよね?」という雰囲気を出した。
この論を元に、「モテるだけなら、ギターとか弾ける質の高いクソ男を目指せばOKという暴論を持ち出し、終了。

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考察。

明確に「女性リスナー」を意識した回。事実、コメントをくれたのも女性だった。
モテる、モテない、というのはコンプレックスに直結する問題でもあり、聴く側も話す側もナイーブにならざるを得ない。それは理解していた。だからこそ「覗きたい心理」が働き、耳目を集めるのではないかと思った。
単なる恋愛話に終始したくないというのが頭の中にあって(その程度なら大多数がすでにやってる)、アホくさくてもいいから自分なりの理論を展開しようと考えていた。あとは自分のコンプレックスを多少脚色して大げさに見せること。ここに文章では表現できない難しさがあるなぁと思った。

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3. #3 父におっパブ連れてかれてマジギレした話 12分37秒 (再生数:48)

メモは残っていないので、考察のみ。

とにかく始めたばかりなので、強力な弾が揃っていた時期。特に何も考えず、「目を惹くタイトルが付けられて、かつ面白い話にしよう」と考えた結果、この話題になった。
テーマとなっているのは「怒り」「無常」「父と子」など、やたらに塩っ辛い。こうした重いテーマを話術によって料理し、笑えるようにするのがラジオなんじゃないかと、これを書きながら思う。
この話は自分でも力作だと思っていて、今でもちょいちょい再生数が伸びたりするので嬉しい。惜しむらくは、こんなクソでかい弾を3回目の放送に持ってきてしまったこと。

以上。これからも活動を記録していこうと思う。時間があれば。

【前編】はじめての白川郷

みなさんは、学生時代をどのようにして過ごしただろうか。
勉強、部活、そして恋愛と、さぞかし素晴らしい時間を過ごしたことだろうと思う。

当の僕はというと、地元で有名な工業高校に進学し、前歯の裏をベロで舐めながら虚空を見つめるだけの暗澹とした日々を送っていた。

少し話がずれるが、この市立高校は自転車の傘差し運転を撲滅することに命を懸けており、雨の日は何が何でも合羽を着させて帰宅させてくる。
べつにそれはいいけど、問題は「合羽が無ければ意地でも自転車に乗らせてもらえない」こと。
いくら「濡れて帰りますから!」と言っても聞き入れられないので、詰みに近い状態が発生する。
そうなると、大雨の中傘も差さずに徒歩で30分ほどかけて帰宅するか、親に迎えにきてもらうしか方法が無くなるのだ。
歩くにしても、長靴なんてものは履いてないし、ペタペタに履き古したスニーカーで水たまりだらけの街を攻略するハメになる。
そうなれば当然、家に帰る頃には「服着たまま風呂入った?」レベルの濡れ方になる。

 

あぁ〜あほんと思い出しただけでもクソ。

 

そのため、一部の脳筋の間では、友達と結託してチャリをパワーで持ち上げ、柵から駐輪場の外へ出して帰宅するという「プリズン・ブレイク」が横行した。
僕も一度だけやったことがあるが、「ただ学校から帰るだけで、なぜこんなことをしなくてはいけないんだ」と思い、それからはやらなくなった。

その後、学校が県から傘差し運転ゼロの表彰を受けたという話を聞いて、社会の構図というものがよく分かった気がする。

大人の作る世界などたかが知れてると。

 

前置きが長くなったが、そんな感じで僕は高校時代の記憶というとクソな思い出しかない。

……ある1つを除いては。

冬になると必ず思い出す、あのバカげた青春劇。
今日はその話をしよう。

 

 

 

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面白かった中学校生活に終止符を打った僕たちは、それぞれ別々の高校に進学していた。
僕は上述の通り工業高校へ、Bショウくんは私立高校へ、jyoくんは僕と同じ学校へ入る予定だったが、素行不良のため落とされ、代わりに私立進学校へと入学した。
学校が違っても、所詮は学生。日のスケジュールは同じだ。
相変わらず集まって遊んでいた僕たちだったが、ある日Bショウくんが切り出した。

「この3人で旅行しないか?」

中学生の時には無かったもの、財力。
当時の僕たちにはそれが形を持ちつつあった。

僕は学校が禁止していたので出来なかったが、Bショウくんとjyoくんはバイトで小銭を稼いでいたのだ。
かくいう僕も両親から小遣いをもらっていたので、ある程度の自由は効いた。

当時、退屈が最大の敵だった僕たちにとって、それを断る理由はどこにもなかった。

「行くしかねぇ!」

こうして、三馬鹿によるカスみてぇな貧乏旅行が幕を開けた。

 

 

 

—▼—

 

 

 

「おれ『ひぐらしのなく頃に』見てから、ずっと聖地巡礼したくって」とBショウくん。

「舞台どこ?」と僕。

「岐阜?」

「白川郷じゃなかった?」とjyoくん。

こんな感じで、目的地は意外とあっさり決まった。岐阜県の白川郷
県の北西、大野郡にある村で、世界遺産にも登録されている。

正直、理由はどうあれ目的地のチョイスは正解だったと思う。
たとえばこれが東北とかになってたら、割と普通に死んでいたと思うから。

詳細はぼかすが僕の地元はは岐阜にほど近いところに位置していて、車なら1時間半もあれば到着する。

旅行計画は以下の通り。

・白川郷までは直通バスが出ているのでそれを利用して向かう
・金が無いので民宿には泊まれない、だからテントを設営してそこで寝泊りする
・到着したらまず手ごろな場所を見つけてテントを設営し、そこを拠点にして観光する

ここで補足を入れておくと、白川郷は豪雪地帯として知られている。
シティボーイ、シティガールの皆様方に置かれてはなかなか想像しにくいとは思うが、冬季はナチュラルに雪が2mくらい積もる。
これは「山間部で」とかそういう話じゃなくて、2mの雪が村をすっぽり包んでしまうという意味。
だから、村に建っている住宅はみんな『合掌造り』という、クッソ勾配のきつい独特な形状の屋根をしていて、豪雪を前提に建築されている。
つまり、雪がエグい。ついでに寒さもヤバい。

 

おわかりいただけるだろうか?
僕たちはテントを設営して寝泊りしようと考えていたのだ。
それも、本格的なテントなんかではない。とりあえず1シーズン持てば良い方くらいの、ほぼほぼ使い捨てみたいなやっすいテントだ。しかも小さい。

僕たちは完全にナメきっていた。白川郷、もとい雪、もとい自然を。

 

計画を練り終えた僕たちは、各々「準備は怠らないように」と言い合い、期待に胸を高鳴らせながら当日を待ったのだった。

 

…後編へ続く。