スモーキンレイニー

明日は雪が降るらしい。

海があって、山があって、雪が降る。たまたま金沢で生を受けたけど、ここで生を全うできることに感謝する。金沢は誇張抜きで何食っても旨いから、次第におれは食への興味を失っていった。どうせこれも旨いし、あれもこれもどうせ旨いし。カニ食ってりゃ間違いないし。こうなってくるとむしろマズいものへの興味が出てくるから人間、不思議なもんである。食った途端「すごく謝ってほしい」と直感したのは、家の近くにあるラーメン屋だけ。残さず食べたけど。「金払ってるんだから食う食わないは客の自由」とか、そういうサムい理屈を真顔で言うようなナンセンス・マンで産まれてこなくてよかった。金沢に産まれてよかった。

今日は健康診断を受けた。身長が171センチ。体重は興味が無かったので見ていない。58~60kgの間と思っておけば間違いない。採血を担当したおばあちゃんの手がものすごくあったかくて、こういうのはいいなあ、と思った。たくさんの人の頭をやさしく撫でてきたであろう手の平は、人の血を吸うには不慣れで、針を抜いたときにははっきりとした血の点が出来た。「ごめんなさいね」と言っていた。おれは舌の上でおばあちゃんの手のぬくもりを反芻して転がして、もう覚えていないけど、でもああいう手をおれは知ってるなあ、と思った。問診ではひたすら「煙草はやめましょう」と言われた。言われたその足で車に戻って一本吸った。

長かったマンションの現場が明日で終わる。毎度の如く、時間に翻弄された現場だった。おれは極力先輩の力になろうとはしている。作業なんてたかが知れてるから、もっぱら別の部分で。指示を出すのがとことん苦手な人だから、それとなく次やることを別の人に示唆したりなんだりかんだり。あんまり上手くいかないけど。おれも人に指図するのが苦手だから。

コーヒーがうまい。雪はたくさん降れば良い。足を引きずって歩く奴はだらしない。