10月の読書

開高健 / 開高健短編選

もうだいぶ前に買ってあったもの。分厚いのでなかなか食指が向かなかった。いわゆる積読だったもの。
内容はというと、半分は小説、半分は手記、みたいな感じ。小説はどれもそれなりに面白かったが、手記の方は国外遠征ものが多くて、地名が全く分からない身としては少々退屈だった。ただ阿片吸引の手記とか、瑠璃石を愛でて「さみしいよお」っていう船医のおじいちゃんの話とかは、面白かった。
それと、文体がカッコいい。これまでの読書では文体にこだわることなんてほぼ無かったけれど、こういうのもまた「本」の持つ世界観の構築に大いに貢献してるんだなと気付かされた。

 

スティーブン・キング / グリーン・マイル 1・2

映画はだいぶ前に見たことがあった。オチや展開がある程度わかっているせいで、せっかくの分冊形式を100%楽しめない状態で読み始めたのだけれど、そんなの関係ないぐらいめちゃくちゃ面白い。
アメリカ式の馴染みの薄い遠まわしのジョークとか、鼠のミスター・ジングルスとか、クソむかつくパーシー・ウェットモアとか。ウェットモアって、「もっと湿らせろ」って、そんなのって、いやらしすぎない?読んでるときはまったく気にならなかったけど。
まだ1巻2巻しか読めていないので、古本屋をつぶさに観察して見つけたら即買う準備をしている。残すところ4冊。これ、当時ちゃんと分冊形式に則って買って読んでた人、ほんと幸せだったろうなあ。

 

赤瀬川源平 / 超芸術トマソン

大当たりの本。
パソコン音楽クラブのインタビュー記事をなんとはなしに読んでいて、そこで「トマソン」という単語が出たので気になって調べたら、この本に行き当たった。入手経路からしてどことなく運命的な感じがしないでもない。
トマソンというのは、「主に不動産に付随していて、無用の長物であるにも関わらず、あたかもそれが展示品のようにして管理・保守されているもの」の総称。一応これが定義。ではあるんだけど、本書の中ごろで赤瀬川氏本人が
「定義に則ってさえいればそれはたしかにトマソンであるが、まずもって美しくなければ話にならないヨ」
みたいなことを書いていて最高だなと思った。本書にはトマソンを写した写真がたくさん掲載されていて、それがどれもこれも美しい。「何も庇わない庇」とか、「塀に向かって伸びているだけの階段」とか、表紙にもなっている「忘れられた煙突」とか。特にこの煙突にまつわるエピソードは鳥肌必至で、気を付けなければ落涙ものだった。

この本については、また記事をあらためてじっくりと解説しようと思う。とてもじゃないけどここは狭すぎる。

 

J.D.サリンジャー / ライ麦畑でつかまえて

有名どころを読んでおこう、ぐらいの気持ちで、ずいぶん前に買って放置されていたもの。ようやく目を通した。
思春期の、漠然としていてどこか本質に一番近いあの感じ、が見事に描き出されていた。読みながらニキビができそうだなと思っていたら、読了した翌日本当に小さいのが額に浮かび上がっていてびっくりした。すぐ治ったけど。
「いい話だな」と思った。難しいことはよくわからない。芸術とか哲学とかいろいろいろいろ詰まってるんだろうけど、とにかくそういうのは置いておきたい。そういう気持ちにさせられた。そういう気持ちにしてくれた。あとなんとなく懐かしかった。