camp

8/28 (金)

キャンプ当日。6時起床。
本当は僕の同級生で先輩キャンパー(語呂の良さに驚いている)のKも来る予定だったのが、どうしても仕事の都合がつかないということで断念。最終的に僕ら夫婦と茨木夫婦の四人で決行する運びとなった。準備は前日に済ませてあったので、起きてから身支度だけして7時には家を出た。ここから高速に乗って約4時間で長野県。
道中は特に危ないこともなく、最後の1時間だけ奥さんに運転してもらい、11時半頃ふもとのスーパー着。向こう夫婦はすでに到着していて、僕は先に車から出てきた奥さん(以下T姉)の顔を見るなり、よく通る声で「おひさ」と言った。向こうも太陽みたいな顔で「おひさ」と返してきた。肌が白かった。線が細かった。美人だった。続いて出てきた旦那さん(以下T兄)は相変わらずの恵体で、照り付ける8月の陽射しも彼の分厚い体を貫くことはできないみたいだった。あの体格、タックルとかされたら内臓まき散らして死ぬな。
その後食材を買い足すつもりが、時間も時間なんで先にメシ食おうということになり、歩いて10分ぐらいのところにある定食屋に向かった。道中テクテク歩く向こう夫婦の後ろを、ナメクジみたいにベロベロ歩く僕と奥さん。奥さんは道半ばにして「クルマニモドロウ…クルマニ…」とうわ言を吐いていた。
定食屋に着くと、「ローメン」なる奇異な料理が推されていたので、せっかくだからと注文。次いでT姉も僕と同じローメンを注文した。T兄はソースカツ定食。

ラーメンというには塩焼きそばすぎるし、塩焼きそばというにはラーメンすぎる、まこと奇異な料理だった。ただし味は最高。ぶっとい麺にスープがこれでもかと絡みつくジャンクなサマはさながらB級グルメ。あとで調べたところによると、これは伊那地方特有の料理なんだそうである。いいもんあるなあ。

ちなみに奥さんはこういうどノーマルなラーメンを注文していた。旨い旨いと啜っていたのははじめだけで、半分ほど食したところで箸が止まり、僕がバトンを受け継いで完食した。奥さんが後日語ったところによると、「あのラーメンはどれだけ食べても減らない」とのこと。ローメンといい減らないラーメンといい、伊那地方には奇異が蔓延しているようだ。

腹ごしらえを済ませ、また炎天下をベロベロ歩いてスーパーまで戻り、スーパーでジャガイモやふぐの一夜干し、酒その他を購入。準備は万端。満を持し、くねる山道をえっちらと上り始めたのが13時過ぎ。約30分ほど登ったところで受付に到着し、チェックインを済ませる。

空には薄雲、見晴らしは良く、よく冷えた空気。湿度が高いのか、空気が重く吸うたびに肺が潤うのが分かった。季節は夏なのに気温は夏じゃない、どの四季にも当てはまらない季節がそこにはあった。思わずカメラを取り出して撮影。

僕たちが予約していたフリーサイト。すでに何組か先客が居たものの、おおむねどこでも設営できそうだったので、適当に人目を避けて端っこの方に設営を開始。この時思ったのが、案外地面がデコボコしているということ。考えてもみれば当たり前かもしれないが、なにせキャンプそのものが初めてなこともあってちょっと驚いた。平坦かと思ってたからさ。あと割と斜面が多い。

設営完了写真。向かって左が向こう夫婦の「やどかりテント」。右が僕ら夫婦の「アメニティドーム」。真ん中にブチ込まれているのが僕ら夫婦の秘蔵たるmozのタープ。このタープ、K曰くキャンプ向きではないとのことだったが、前室がバカみたいに狭いうえヘキサタープを持っていない僕らはこのタープがいわゆる「リビング」となるわけで、文句を言ってる場合ではなかった。
設営してからは荷物を運びこむわけだが、僕らの荷物ときたら尋常の量ではなく、二人で車とテントを5往復以上、挙句の果てに向こう夫婦にも手伝ってもらうという事態になり、早々に体力を削がれてしまった。情けなし。さらに人目を避けて端っこの方を選びすぎた結果、斜面の上にテントを設営する形になってしまいへこむ。

何はともあれ形になったのでつかの間の休息。僕らのサイトから向こう夫婦を撮影したもの。特色が表れていて面白い。ちなみにこの時点で奥さんは虻に刺され、右足の内ももが真っ赤に腫れあがっていた。それから僕は虻に「アブみ沢」という総称を付け蔑むことにした。アブみ沢ってなに?

そうこうしているうちにいつの間にか霧に巻かれる。タープ内に避難して夕食づくり開始。

火起こし壺で火起こし→ナイフを借りて薪割り→焚火→アヒージョ作り。このあたりになってくると疲労が体全体にしみこむような感じがしてきて、四肢がじんわり痛かった。食って飲んで「宴もたけなわ」といったところで、麓で仕入れたジャガイモを使ってじゃがバターを作ることに。じゃがバター大使としてその責任を一身に背負う僕。焚火にジャガイモをブチ込んで数十分。BONFIRE!!!!!!!!!

嫌な予感が無かったといえばウソになる。ジャガイモに竹串を刺した時の感覚が、硬い→やわらかい→硬いと変化していくのを見て、「ん?さっき一回やわらかかったのになんで硬いの?」と一抹の不安と共にアルミホイルをほどいてみたら石が出てきた。T兄が気を利かして「でもほじれば食えるよ多分」と言ってスプーンでゴリゴリほじってくれたが、どう考えてもバターのおいしさだけで食べていた。焦げの不気味な酸っぱい味はどうやっても隠し切れない。

その後、クックパッドを参考にしつつ濡れ新聞紙にくるんでリベンジしたらいい感じになった。じゃがバター作るのにクックパッドが必要な人間って、控えめに言ってもカスだと思う。

焼き鳥、白米、アヒージョ、石に舌鼓を打った後この日は就寝。が、前述のとおりテントを斜面に設営していたため寝心地がクソであり、体を突っ張っていなければズルズル下に向かって滑ってしまう。さんざん毒づきながら疲れに任せて無理やり就寝。深夜に狐の鳴き声を聞いた気がする。

8/29 (土)

迎えた二日目。7時起床。最悪な寝心地のせいで奥さんは体中をしこたま痛め、僕に至っては結露のせいで左肩がビチャビチャになっていた。何もかもが最悪である。
とりあえずテントを脱してタープの下で煙草を吸う。キャンプ場は霧で煙っていてなんだか神秘的だった。死にかけのナメクジみたいな動きで炊事場に向かい、洗顔と歯磨きを済ませる。

その後とにかく腹ごしらえをしようということで、奥さんがトーストサンドを作ってくれた。

具は目玉焼きとベーコン、味付けはケチャップとマヨネーズ。クソみたいなじゃがバターで終えた一日目から地続きとは思えない素晴らしい出来である。めちゃくちゃ旨かった。
朝食を食べたのち、奥さんの提案でテントの設営場所を平坦な場所に移すことに。がしかし運悪く、この時に限ってカンカン照りとなり、設営が完了するころにはすでに満身創痍の様相を呈していた。この時点で12時過ぎ。
昼食を食ってもよかったが、前日から風呂にも入れていないので、ともかく銭湯に行こうという話になり、T兄の運転に肖って下山。テントその他は放置。
道中、足りない物資を補給するためにカインズホームやコメリを回り、銭湯に入ったのは14時頃。ありがちな安っぽいジャグジーに肩まで浸かりながら、今頃会社のみんなは汗だくで働いてるんだろうなあとか考える。サッパリした後山道を登り、テントに着いたのが15時過ぎ。
どうやら強めの雨が降ったようで、あらゆるものがビチャビチャになっていて萎えた。濡れたものを片し、カップ麺を啜って寛ぐ。たびたび夕立が襲ってきたが、無風のためタープ内に居ればダメージは食らわなかった。

ナナメ後ろのテントから、「雨キャンは最高だな!」と景気の良い声が聞こえてきて、なるほどと思った。たしかに視点を変えてみれば、これだけ雨と近くで過ごせるというのはなかなか無い。せっかく文明を手放してここまでやってきたのだから、ネイチャーとの交信を軸に据えた生活にシフトすべきだ。それから僕は天候に関してはあまり頓着しなくなった。サンキュー、名前も知らないおっちゃん。

そして迎えた二日目の夜。ジャスピンの方でも何枚か撮っていたが、フィルムの上限に満たなかったのでまだ現像に出していない。これはM-1に三脚をブチかまし、f1.8のシャッタースピード1/1で撮ったもの。ブレブレか、そうでなければ露出オーバーで意味不明な写真になっているだろうと踏んでいたが案外きれいに撮れていたので良かった。

団らんの最中、「今日が終わったら明日には金沢か…」と考えてどんよりした。誇張抜きで、この時間が一生続いてくれればいいとさえ思った。キャンプをナメていた。キャンプの夜をナメていた。

そしてこの日の晩飯。タコとマッシュルームのアヒージョ。しかしこれ見れば見るほど笑えてくる写真である。
味は最高に旨かったが、何かの手違いによって発色がドブみたいになっているうえ、地面に直置きである。後日、Kにこの写真を見せたところ「ドブみが深い」というヤバすぎる名言が爆誕し、ツボったT姉が永遠に笑っていた。ドブみの深いアヒージョ。業の深いアヒージョ。

念のためと思って撮った月。ボケボケだが案外ちゃんと映っていて驚いている。バルブ撮影してもう少し光を入れてやればもう少しきれいに映ったかもしれない。とはいえブレてるのはどうしようもないが。

この日はこれで就寝しようという段になって、T姉が「朝方、星空がきれいだったら起こしてあげる」と少女漫画のワンシーンみたいなことを言い出したのでお願いして就寝した。

8/30(日)

そして迎えた明朝4時。ガサゴソと音が鳴っていたのは覚えているし、ささやき声が聞こえたのも覚えている。奥さんが起きて、「どうする?」と聞かれた僕は一言「いい…」と言ったのも覚えている。だらしねえな。

奥さんがデジタル一眼で撮った写真。これを見て、無理してでも起きればよかったなぁと少し後悔。夏の明朝の山中。どの時間軸にも存在しない、不明瞭で静謐な地球の深呼吸。勿体ないことをしたなぁと思う。

結局僕は8時頃に大量の寝汗と共に起床し、ダラダラと片づけを手伝い、シャワー室でシャワーを浴びて11時前、向こう夫婦を見送った。愛犬を動物病院に預けていて、お迎えの時間が決まっているので僕らよりも先に長野を出る必要があったらしい。また会おう、お気をつけて、ハバナナイスデイ。とは言ってないけど、「年内にまたやろう」と約束した。

手持無沙汰になった僕ら夫婦は最終日にしてようやく展望台に行き、何枚か写真を撮ったのち下山した。
高速が工事か何かで通行止めになっており、下道も要所で土砂崩れの影響か通行止めになっていたので山道に次ぐ山道を通る羽目になり、高速に乗れたのは下道を4時間も進み、岐阜を超え富山に入ってからだった。そこから運転を変わって1時間ほど奥さんに運転してもらい、17時頃無事に帰宅。
帰宅後は大量の荷物の整理に追われ、息つく暇もなかった。31日も休みをとっておいてよかった…と心から安堵した。奥さんは諸々の用事を済ませた後ソファにブッ倒れ、僕は僕でAPEXに熱を上げていた。

翌日は奥さんと二人で買い物に出かけたが、そこまで書いていると長くなりすぎるので割愛する。ともかく、キャンプは最高だった。本当に最高だった。いろいろな不便を差っ引いても最高すぎるくらい最高だった。どれくらいかというと、金沢に帰ってきた開口一番が「キャンプしたい」だったぐらいには最高だった。またやろう。必ずやろう。