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熱い粥が食いたい。とびきり熱いやつ。snow peakのガスストーブに土鍋を乗せて、地獄の釜みたいに熱してから卵を落として啜りたい。夏にこんなことを話すのは暑苦しくてたまらないが、ともかく僕は口にするものはなんでもアツアツかキンキンがいいんである。でも冷えていて許せるものはおおむね決まっている。食事と称して召すものはなんでもアツアツに限る。口内の火傷など知ったことか。そのぐらいで死にはしない。
すき焼きも食いたい。これまたsnow peakのガスストーブに鉄鍋を載せて、溶解寸前まで熱せられた焼き豆腐に溶き卵の衣をたっぷりと着せて頬張りたい。その時僕は文字通りの幸福を食らうことになるだろう。

そんな風なことを考えて過ごす1日だった。割と意味の成さない空調服に辟易し、ポカリスエットを1リットルも飲んだ。たしかに世界は火元からは離れているらしい。でも余熱がまだ残っている。真綿で首を絞めるようなこの気温、街の人が正気を失うのも時間の問題だ。僕のようにはじめから失う正気がなければ、この世はどっこいやっていける。
晩飯を済ませ、玄関先で煙草を吸いながら指をパキパキ鳴らしていたら、通りすがりのおばちゃんにガン見された。閑静な住宅音に響く骨の音。きみらにとっては怪音でも、僕にとっては快音に違いない。小学校からの癖でどうにもやめられない。おかげで指はどれもこれも節くれだっているし、右手の中指に関しては緩やかに右に向かってカーブしている。これじゃ眼前のテメエに中指を立てていても、実質テメエの斜め右後ろの誰かさんが、ミドルフィンガーの謂れなき餌食になっちまう。気の毒なことだ。街には気の毒なことがたくさんある。

そういえば今日の夕方、仮設足場の中を申し訳なさそうに素通りしていくネコちゃんを見た。スーパーで、カートがぶつかり合ってしまってちょっと気まずくなった時の主婦と同じ目をしていた。もっと堂々としてていいぞ。