息の日

午前中は一人で現場。難なくそつなくこなして昼食。午後からは樹脂注入の実地試験で現場を開けていた大畠さんが帰ってきた。しきりに「落ちた落ちた」と言っていて、こういう人学生の頃よく居たなあと思いつつ、「大丈夫っすよ大丈夫っすよ」って言っておいた。どうせ結果が分からないのなら、とびきり幸せな風に考えよう。それがおれの基本方針。頭ごなしに全肯定。なぜ受かってると言えるのかなんて考えるのはナンセンス。受かってると思ってりゃいい。腹の底で密かに落ちたときのことを考えて、腹を括っておけば大丈夫。

今日は気温の割に寒かった。風の影響が大きいと思う。ここ最近で分かった自分の体の特性に、「オートヒーティング機能」というものがある。これは外気温が-3度を超えると体内の心棒が自動で発火し、結果的にほとんど寒さを感じないというもの。これがたとえば外気温0度とかの場合、オートヒーティングが機能しないギリギリのところになるのでおれは寒さに打ち震える。でもみんなが異口同音に「今日はさむい、今日だけは無視できないくらい寒い」と唱える日には、おれは少しも寒くない。

現場からの帰路、uri gagarnを聞く。信号待ちで停止する。横断歩道に眼鏡をかけた小太りの若い男が立って、身をすくめながら煙草に火を点けた。そいつが路肩に集められた雪に痰を吐くのと同時に横断歩道が青になって、そいつは向かいにあるスロット屋に吸い込まれていった。おれはOwlを聞きながら、その光景をずっと目で追っていた。まっすぐスロット屋に向かっていく男の背中は何も語らなかった。おれはその光景を忘れないように、口角を上げて頭の中でシャッターを切った。だから今でも鮮明に思い出せる。小雨の降りしきる紺色の街、土曜の夕方、痰吐き散らしながらスロット屋に戻っていく若い男。これが街だと思った。だからおれは笑った。