富士のララバイ

「人生、幸せです!」とか大声で言ったりすると、世界人口の半分がサーッとおれの側から引いていくわけ。「人生ってつまんないよな」とかって小声で呟いたりすると、世界人口の半分がワーッとおれの側に寄ってくるわけ。生きていくことは、世界の半分から嫌われることだ。生きていくことは、世界の半分から愛されることだ。そんなこんなで。キャンプに行ってきた。先に言っておくが、ここから先の日記は「人生、楽しいです!幸せです!」のノリで行くから、相容れない人はとっとと出て行ってくれ。

4月4日(日)

前日が急遽休みになったので、かなり余裕を持って出発できた。19時過ぎに金沢を出発し、20時に小矢部川パーキングに到着して晩飯を摂った。難しいこと考えず、味噌ラーメンとカレー丼のセットで。カレー丼って結局器がカレー皿から丼に変わっただけだと思うんだけど。いや別に文句とかじゃないけど。ただそうなんじゃないかなって。
北陸自動車道からジャンクションを経由して中部縦貫道に乗り換え、飛騨清見ICで一旦降ろされる。地元の人でも用が無ければ通らないような山道を頭文字Dみたいなノリでグングン進みつつ、長野県は松本ICから再度高速へ。ウンウン唸りながらようやく富士宮市に到着。25時過ぎ。約6時間運転。おれと妻は待ち合わせ場所の道の駅に車を停めて仮眠を取った。

起きて朝の7時。Kが到着していたので、朝飯とコーヒーを調達するのにコンビニへ向かう。しばらくして茨城夫妻も到着し、晴れて役者が揃った。カメラを試写する等して過ごす。

8時30分入場。富士山麓ふもとっぱら。「FUMOTOPPARA inc.」。到着したときは天気が良かったのでかなりの数のテントが立っていたが、おれたちが設営を済ませる頃には半分以上が居なくなっていた。

早速焚火を始めるK。こいつカッコイイのほんとなんなん。ただ火起こしとるだけでカッコイイのってなんなん。来世女で産まれてきたらこいつの彼女になろうと思う。

我が家も負けじと。天気が悪いので光量が物憂いのはご愛敬。寒そうに見えて、実際ちょっと肌寒かった。風も少々。設営完了したのが11時過ぎで、昼飯は作ってる間が無かったので事前に買ってきておいたカップ麺を5人で啜った。この頃には大半のキャンパーがテントを畳んで帰ってしまって、写真を見ても分かる通りのがらんどう。富士山は「富士山って何?」ってぐらいに雲で隠れてしまい、ふもっとっぱらのアイデンティティがゴッソリ奪われていた。

なんだかんだ言いながら晩飯の準備。茨木夫妻は漬け置き肉を使った焼肉、金丸家はすき焼き、Kはたこ焼き。焼き三拍子を揃えて胃のテンションをバチバチにアゲてレッツクッキング。

実食。飲んでは食い、食っては飲み。ボキャブラリーを破壊されたおれたちはひたすら「うまい」とだけ叫び、あまりの旨さと場の幸福な雰囲気に呑まれたおれは呆けた顔をしながら人生の意味について考え、「いやまったく、生きているということは素晴らしい」と独り言ちて薪を割り、雨の上がった隙を見計らって一人、スミノフをやりながらBON FIREを眺めた。

「なんで焚火ってずっと見とれるんかな」って独り言で言ったら、Kが遠くの方から「そりゃあ、DNAに刻まれとっからな」って答えた。「刻まれとるんか」って言って一人で合点して、飽きもせず延々と薪をくべた。生木の爆ぜる音がなんとも心地良い。思い出したようにたまに振り返って、「人間、火を発見したからここまでやってこれたんだよ」とかなんとか言って、妻に無視され美人の人妻に愛想笑いされ、それでもおれは幸福な気持ちでスミノフをちびちびやりながら、ずっとずっと焚火を見ていた。飽きなかった。

我が家近景。シェルターは大人5人が入っても十分なぐらいのスペース。

この日は語らったりカメラで遊んだり酒を飲んだりして23時過ぎに就寝。おれは寝心地を優先してパンいちになって寝袋に潜り込み、「叡智~!」って叫んで妻に怒られ、程なくして眠った。

4月5日(月)

THE★おはようございます。富士山麓の朝は瑞々しく、明朝ホーホケキョが鼓膜をくすぐってた。おれは寝ぼけた頭で「ホーホケキョって何の鳥やったっけ…は?ホーホケキョって鳴くんやからホーホケキョに決まっとるわな」とか意味不明なことを考えて二度寝をむさぼった。妻に怒鳴られ起床。撤収作業は11時過ぎに完了し、おれたち5人はふもとっぱらを後にした。

5人がして「とにかく風呂に入りてえ」と言うので、「風の湯」なる銭湯で二日分の汗と泥と肉の汁と焚火の煙を洗い落とした。Kと茨城旦那は腹がデップリ出てしまっていて気の毒だった。おれはここぞとばかりに引き絞られた腹筋と胸筋を披露しておいた。ほとんど下戸だからビール腹とは無縁とかなんとか。

風呂から上がってすぐ昼食。「まかいの牧場」、「魔界の牧場」?知らんけど、とにかくそういうところでバインキングをぶちかました。欲望に抗いきれずに紛れ込んだ唐揚げとハンバーグ、カレーの主張が痛ましい。言い逃れのために添えられたマリネとなんかよく分からんヒタヒタのサラダが肩身狭そうに収まっている。しかしどれも大変美味しく頂いた。

それからは待ち合わせ場所だった道の駅に戻り、各自「またね」と言い合って無事を祈り、また6時間かけて金沢まで帰った。それで今これを書いている。また5人でキャンプがしたい。Kに彼女が出来たらその子も誘って6人で。