「ところで風景変わったな」

東山を抜け、兼六園坂上を舐めるように上昇して、石引に至る。このルートがかなり好きだ。金沢の金沢っぽさ、観光地の中にある生活感、またはその逆。東山は無電柱化工事がだいぶ進んでいて道がすっきりしていた。今はコロナで人がまばらだけど、夏休みのシーズンくらいになると浴衣姿の女子大生グループが散見できて微笑ましい。

今日は一人で仕事した。すこぶるがんばった。一人でする仕事ほど捗るもんはない。誰の言うことも聞かなくていいし、誰にも指示しなくて良い。全部自分のペースで出来る。昔からドッヂボールとかサッカーとかああいうチームプレーに要を持ってくるタイプの競技が苦手だったんで、根っこの部分はずいぶん前から変わってないんだろうと思う。
暑くてたまらんのでエンジンかけて車内で弁当を食いたかったが、さすがにずっとアイドリングは気が引けるので近くにあったパチンコ屋の駐車場に車を停めて飯を食った。土曜日だからか知らんがかなりの人が居た。あんな玉入れの何が面白いのか良く分からん。
現場に戻ると住人のおばあちゃんが話しかけてきて、「これで何か飲み物でも」といって千円を握らされ、「ついでに」と甘露も寄越してきた。おれが金子さんから学んだことの一つ、「気前良く寄越されたものは気持ちよく受け取れ」。尋常の生活圏を超えた「とくべつ」を、なんの権利も無しに受け取るのは気が引ける、なんてのは都合の良い考え方であることをおれは知っている。

ちょっと残業して帰宅。妻の親戚に不祥事があって、離婚の話が持ち上がっているそうだ。そのことで妻は何か仕事を言付かったらしく、月曜日は仕事を休むと言っていた。おれは何か中州に居る気がする。何が起きてもそれを見ているしかなく、そもそも自分には関係ない。せいぜい印象をくみ取って、自分に濁流が押し寄せてきた時の備えにするぐらいしかない。「あれっ、人生ってこんなにトントン拍子でしたっけ」というのが、おれの素直な感想。何の悩みも無い。ひとつも苦しくない。