(空白)

いかにもおれ好みのする小柄な30代の女と、なぜか男子便所で抱擁する夢を見た。彼女の身体はまるで布を抱くみたいに頼りないくせ、体温だけは人並み以上だった。夢の中のおれは驚いて、「こんな、華奢な…」とそれだけを言い、それを聞いた向こうはくしゃっとした顔で笑っていた。見たこともない顔だった。決して誰にも似ていなかった。

終日雨。時折青空が顔を見せることはあっても、それはかならず雨雲に溺れるようにして、苦しそうに雲の切間から覗くだけ。昼少し前に太陽が完全な形で現れたものの、すぐ雨雲の優勢に変わった。金沢の街はもうとっくに溺死している。
J.S.ミルの『自由論』を読んでいる。むっずい。準備体操しないで水泳を始めた感覚にちょっと似ている。気を付けないと脳がつる。とはいえ、なんかものすげえことが書かれていそうなので頑張って読む。一回読んだぐらいじゃ理解できそうもないので、必要に応じて何回も読み返そうと思う。学術書かな?

地獄から香ってくるみたいに臭い仮設便所に入ったら、まるまる太った銀蝿が、まっすぐこちらを見つめていた。