めがね / 眼鏡 / megane

眼鏡は不思議だ。突き詰めれば、それは眼前に置かれたレンズそれだけであるのに、人の(主に僕の)心を魅了して止まない。今日はちょっと奮発して、好きなブランド and 気になっているブランドについて考察しようと思う。

*** *** ***

・OLIVER PEOPLES / https://www.oliverpeoples.com/international

オリバー・ピープルズといえば眼鏡。眼鏡といえばオリバー・ピープルズ。まさに定番中の定番のブランド。
このブランドの特色としては、何といっても「真面目な眼鏡を作る」ところにある。気取り過ぎず、ただシンプルに、引き算の作り方をする。何かを足すにしても、それは非常にさりげない形で細部に宿っている。僕は初めて眼鏡を作る人には、とりあえずオリバー・ピープルズをおすすめしている。シンプルで主張しすぎないデザインと共に、豊富なラインナップによってどんな顔型の人にでも合うからだ。
トレンドを抑えつつ、飛躍し過ぎないギリギリのラインできれいにまとめてあるオリバーの眼鏡は、安心感がすごい。どんなシーンでも活躍してくれる。
ただ、基本的に上品な感じなので、フレッシュみあふれる10代の人とかがかけるにしては、ちょっと重くなるかもしれない。「ハズし」といえばそれまでだが、あえてハズすのであればわざわざオリバーを持ってくる必要はない。オリバーは正当な「眼鏡」であるのだから、ちゃんと「眼鏡」として使ってあげなければだめだ。

・YUICHI TOYAMA. / http://yuichitoyama.com/

圧倒的な美しさ。まるで工芸品のように輝くそれは、眼鏡というには少し惜しい気すらする。
少し触れただけで折れてしまいそうなそのラインは、しかし確かなしなやかさと剛性を備えている。
ユウイチトヤマの特徴は、ブリッジにある。気持ちいくらいふんわり弧を描いたそのブリッジは、のびのびとしていて、ちょっと他ではお目にかかれない。縄跳びから着想を得たという「ダブルダッジシリーズ」においては、まるで一筆書きで描いたようなラインを見ることができる。
思うに、ユウイチトヤマのフレームには「光」が宿っている。ただツヤツヤしているとかそういう意味以上の、なにか形而上的な光が差し込んでいる。「1Q84」のリトル・ピープルじゃないけど、空間から光の糸を紡ぎ出して生成したかのような美しさがある。

・theo / https://www.theo.be/

僕の一番好きなブランド。
テオの眼鏡は、常に躍動している。一見すると眼鏡かどうかも怪しいそれは、しかし確かに眼鏡であって、眼鏡であるからこそ眼鏡以上の意味を宿している。
リムを2つくっつけてみたり、ブリッジを延長してレンズを横切らせ、「見る」ことをとことん邪魔してみたり、テンプルエンドにリムを作って「第三の目」とかやったり、もう無茶苦茶である。しかしそれは単にふざけているという以上の何かを感じさせる。そこに根付くのは、テオの確かな哲学、「theo loves you」である。テオは眼鏡をかけるすべての人を愛している。
愛とは、何も肯定せず、否定せず、与えず、奪わず、ただあるがままを受け容れることにある。眼鏡をかける、その行為を愛するが故に、テオは躍動する。
ファッション的な観点から見ても、theoはすごい。眼鏡を掛ける人が「見る」のはもちろん、眼鏡を掛けている人が常に「見られている」ことも意識している。もっと言えば、眼鏡を掛けている人が自分自身を「俯瞰する」ことも視野に入れている。一見するとものすごい悪目立ちしそうなその物質感、質量感は、しかし人の顔と融合することで呆気なく引っ込む。人の顔込みでデザインがされている、何よりの証拠だと思う。

・meganerock / https://www.meganerock.com/

クラフツマンは雨田氏。素材はすべてセルロイド。福井県鯖江市に工房を置く、正統派「黒縁眼鏡」。
こってりとした黒縁眼鏡なら、エフェクターや白山眼鏡などいろいろあるが、メガネロックには独特の「コミカルさ」がある。定番とトレンドをしっかりと抑えたうえで、そこにきちんと自分自身=雨田氏のデザインが乗っかっている。あまり黒縁眼鏡を好かない僕が惹かれたのも、そういう理由。
コミカルであることは、どこか抜けていると言い換えることもできる。これは、考えてみるに結構重要なことである。眼鏡は顔に張り付いているわけだから、常に表情と共にある。即ち、笑い、泣き、怒り。たとえばオリバーなら涙が似合うとか、theoなら笑いが似合うとか。メガネロックはそういうのが無くて、コミカルだからこそ表情を表情のまま見せられるだけの余白が残されているように思う。イメージにがっちり捉われない、ということは、長く使えるということだ。長く使えるということは長持ちしなければいけないわけで、そうすると、素材をセルロイドに限定する意味がよく分かる。しなやかだからフィッティングはしやすいし、剛性があるから壊れにくいし、もし壊れても直しやすい。実に理に適った、良いブランドだと思う。

・Haffmans & Neumeister / https://www.haffmansneumeister.com/

眼鏡というのは、やっぱり、顔に掛けておくものだから、立体的な構造を有していなければならない。テンプル、ノーズパッド、この二点でしか眼鏡を支えられないとなれば、デザインもそれなりに束縛されてくる。どうしても三次元的なデザインを余儀なくされるのだ。
ハフマンスをはじめ見た印象、これはちょっと筆舌に尽くしがたい。圧倒的な美しさと、驚くべき「平面性」。オールフラット、と呼びたくなるほど平面的なそのデザインは見事と言う他なく、ただただ見惚れるばかり。これを顔に掛けるのだと考えただけで勃起しそうな。
素材はシートメタル。限界ギリギリまで薄く細く加工したそれは、まるで光芒。とんでもなく妖艶で、知的。何かこれは眼鏡というよりも、太陽の光とか、満点の星空とか、そういう誰にとっても普遍的な美しさを備えた何かに近い。詩的ですらある。果たして人間がこんなものを作り出せるのかとすら思ってしまう。
フラットであるということは、奥行きが無いということだ。奥行きが無いということは、必ずしもネガティブなことではない。むしろ、ハフマンスは「眼鏡」からあらゆるすべての要素を引き算したうえで、最後の最後、「立体性」を引いたのである。故にそれは、エフェクターよりも圧倒的な存在感を醸し出す。

*** *** ***

良い眼鏡は、総じてイメージやスタンスが確立している。逆に悪い眼鏡は、あれもこれもと欲張るせいで器用貧乏になっている。
器用貧乏な眼鏡は、掛けていても面白味が全くない。あ、眼鏡。視力、お悪いんですか。いかにも。あ、左様ですか。これで終了。せっかく近視でもこれじゃあんまり味気ない。
おや、眼鏡。素敵ですね。左様。良い物ですよ。不思議ですね。不思議でしょう。眼鏡一つでこんな会話が産まれたら、最高に幸福だと僕は思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA