自家現像の手引き

道具

1. フィルムピッカー
写真中央やや右。黄色い台紙のもの。
パトローネ内に巻き込まれたフィルムのベロを引っ張り出すための道具。必須。

2. ダークバッグ
写真右。黒いやつ。
フィルムをパトローネから出した後は、現像が完了するまで決して光に当ててはいけない。
ダークバッグは簡易的な暗室。フィルムをリールに巻き取って現像タンク内に入れるまでの工程は、このダークバッグの中で行われる。必須。

3. 現像タンク
写真中央やや左上。赤い蓋に黒いタンクのもの。
実際にフィルムを現像する際に使用する重要な用品。もちろん必須。
カッコよさを求めるのであればステンレス製品を中古で探してみても面白いかもしれない。でも使い勝手はたぶんこっちの方が格段に良い。

4. 温度計
写真手前。青い台紙にシルバーの棒。
水温管理をしなければならないので必須。
モノクロ現像だけならそれほど厳密な温度調整も必要無いので、安物でも防水機能が付いてさえいればなんでも構わない。
おれはカッコ良さを求めてステンレス製のものにした。

5. 薬品ボトル
写真中央やや上。茶色い容器。
調合した薬品を保存しておくためのもの。
極論、ペットボトルでも問題ない。おれはカッコ良さを優先して専用品を買った。
ただし水溶液は直射日光を嫌うそうなので、ペットボトル保管の場合は保管場所を選ぶ必要がある。

7. 一リットルのビーカー
写真撮り忘れ。100均に売っているもので十分。
とりあえずは3~4個あれば間に合う。必須。

6. 桶
写真上。黄緑色のもの。
これに規定の温度に保った水を張って、そこに水溶液の入ったビーカー入れて温度を調整する。これも100均で十分。
ビーカーが少なくとも3つ以上は入るような形が好ましい。必須。

7. ろうと
写真上。桶の中の半透明のもの。
使い終わった水溶液をボトル内に戻したりするときに使う。ビーカーに注ぎ口が付いていれば要らないかもしれないが、どうせ100均に売ってるのでケチる意味無いと思う。あると便利だし。

8. 使い捨てゴム手袋
写真なし。
薬品は別に直に触っても問題ないと思うが、へんな匂いがついたりするのでできればあったほうが良い。
あとフィルムを素手でベタベタ触るのはよろしくないので、ほとんどその用途で使う。
できれば手のひらにピッタリフィットするようなやつが望ましい。けっこう手先を使うので。

9. フィルムクリップ
写真中央。フィルムピッカーの右。
すべてが終わった後にフィルムを吊るして乾燥させるためのもの。専用品でなくても良いらしいが、専用品の方がいいらしい。カンジも出るしな。ということで必須

薬品

1. 現像液
写真中央。黄色い袋のやつ。Kodak D-76
現像液にはいろいろ種類があって、好きなものを選ぶことができる。選んだものによって写真の仕上がりが違うらしいが、とにかくおれはド素人なので、使い勝手が良いと評判のKodak D-76を購入した。
このあたりは自分でいろいろと調べてみて、フィルムとの相性を考えたり試したりしてみるとオモシロイと思う。

2. 停止液
写真中央やや左。
薬局とかに行くとクエン酸が売っているので、それを一リットルに15gの分量で配合する。
おれは軽量スプーンを使うのがマジでだるかったので、3g×12包装のものを買って5袋ぶち込んだ。

3. 定着液
写真右上、角ボトル状のもの。ILFORD RAPID FIXER
硬膜、非硬膜と二種類あるが、とりあえず非硬膜のものを選んでおけばよい。らしい。おれはたまたま参考にしたブログで使われていたのがこれだったので、ラピッドフィクサーにした。この薬品もたくさんの種類があるので、こだわりたい人はあれこれ試してみてもオモシロイと思う。

4. 水洗促進剤
写真左下。白い袋状のもの。富士QW
定着処理が終わった後のフィルムは水洗を要するが、この薬品を用いることで水洗時間を大幅に短縮することができる。
とはいえ、おれは定着液に非硬膜タイプのラピッドフィクサーを選んだ。これはラピッドと冠するだけあって、定着処理後の水洗時間が少ないのがウリ。そうなってくるとわざわざ別で水洗促進剤を用意する意味は薄い。簡単に言えばシクった。
とはいえ安いので、あって損するようなものではない。

5. 水滴防止剤 or スポンジ
写真右上、ラピッドフィクサーの隣。富士ドライウェル
いわゆる界面活性剤で、すべての工程が終了したあとのフィルムを水滴から守る役目を果たす。
ビチャビチャのままフィルムを乾燥させてしまうと、ムラができたりしてすこぶる良くないんだそうだ。なもんで、こうした水滴防止剤を使うか、そうでなければ専用スポンジでもって水滴を拭き取るかしなければいけない。
スポンジはクソ高いうえにフィルムにカスが付く恐れがあるというので、おれははじめからこっちに決め打ちした。スポンジは今後使うつもりはない。

現像工程

・フィルムのベロ出し

まずは大切なフィルムを用意。
写真のこれは、ジャンクカメラを買ったらオマケで付いてきたものを拝借した。練習用。

フィルムピッカーの説明を読む。

パトローネにピッカーをぶち込み、

一つ目のボタンをスライドさせる。
この後、パトローネの巻き芯をつまんで本来の方向へ巻いていく。
途中でパチンという音とともに手ごたえを感じるので、

そしたら次のボタンをスライドさせる。

最期に引っこ抜くとベロが出てくる。なにこれすげえ便利な道具。

・フィルムをリールに巻きつける

余分なところをハサミで切る。しかしこのハサミだっせえ。ここで使うにはデザインを間違えすぎている気がする。

巻いている最中。ガッツリ感光。さようなら、顔も知らない誰かの写真。ハバナイスデイ、また会う日まで。
このリールはドチャクソ使いやすくて、ガイドに沿ってフィルムの頭を差し込んだ後に、片面を前後させていくだけで巻き込んでいくことができる。

すべて巻き込んだ様子。

可能なら、いらないフィルムを一本用意して、こういう風に明るいところで練習することを強くオススメする。2,3回明るいところで見ながらやってみて、次に目を閉じて2,3回、念のためにダークバッグの中に入れて2,3回、もやればだいたいコツは掴める。おれは10分くらい練習して一発でイケた。みんなもイケる。

この先写真を撮り忘れたが、リールに巻きつけたフィルムを現像タンクの中に仕舞い、シッカリと蓋を閉じて完了。もうダークバッグの中から出してもOK。

・現像

いよいよ本番。タンクの中には決して光に触れさせてはいけない大切なフィルムがあり、桶の中にはよくわからん水溶液が入っている。このラボ感な。この緊張感な。
ここで各種水溶液のレシピを簡潔に記しておく。

・現像液 (Kodak D-76 粉体)
一袋で一リットル。まずは50℃のお湯をビーカーに800ミリリットル注ぎ、そこに粉体を少しずつ加えながら撹拌する。けっこうダマになりやすいので、焦らないで少しずつ少しずつ入れていく。全部入れきったら残り200ミリリットルを注ぎ、十分に撹拌する。これで現像液の完成。
もちろん、選んだ薬品によって希釈量その他は変わってくるが、だいたいは製品に明記されているし、よしんばされていなくてもネットで調べればすぐに出てくる。

・停止液 (クエン酸 + 水)
水道水一リットルにクエン酸を15gぶち込んで完成。

・定着液(ILFORD RAPID FIXER)
5倍に希釈。4:1。それだけ覚えておけばOK。おれは一リットル作りたかったので、本品200ミリリットルに水800ミリリットルをぶち込んで撹拌した。

・水洗促進剤(富士QW)
二リットルの水に全部ぶち込む。計量できる場合は一リットルずつ作ってもいいかもしれないが、おれは面倒くさかったので一気に二リットル作った。ざまあみろ。

・水滴防止剤(富士ドライウェル)
200倍に希釈。一リットル欲しかったら50ミリリットル。950ミリリットルの水を用意して…というのはメンドクサイので、おれは一リットルの水道水にコイツを50ミリリットルぶち込んだ。このへんは多少アバウトでも構わんと思う。

作り終えたらボトルに入れて保存。カッケ~。テプラがある人はこうして貼ってやるとラボ感が出てすごく良い。おれはわざわざ実家までテプラを借りに走った。

ここから先、写真を撮っている暇が無かったので文章のみで説明する。

 1. 既定の温度まで 温め / 冷まし た水を桶に張る。
温度調整器なんて高価なものはいらない。お湯を足したり引いたりして既定の温度にまで持っていく。
おれは20℃に合わせた。

 2. ビーカーに現像液、停止液、定着液の三つを注ぎ、桶の中に入れて10分ほど放置。
ときどき温度計をビーカーの中にカチ込んで水溶液の温度をチェックする。おれの場合なら、20℃にきていればOK。
ちなみに水は冷ますほうが時間がかかるので、最初は普通に水を入れてそこにお湯を足していく方法の方が楽だと思う。

3. 現像処理
現像液をタンクにぶち込み、タイマーをセット。現像はこの時点で開始されている。
現像時間は、

使用している現像液 × 使用しているフィルム × 水温

のイコールで割り出す。おれの場合は、

D-76 × FUJIFILM NEOPAN100 ACROS Ⅱ × 20℃ = 10分30秒

そんなんどこで調べるねんという方は、 https://www.digitaltruth.com/devchart.php このサイトを参考に。
左のメニューからフィルムと現像液を選択すると現像時間を割り出してくれる。温度はだいたい20℃で統一されてる。あとは普通に製品に明示されてる場合もある。

どれだけの量の現像液を入れれば良いのかは、現像タンクの説明書を参照。おれの場合は35mmフィルムが1本だったので、現像液は375ミリリットルぶち込んだ。

4. 攪拌作業
まずはタンクを手で叩いて気泡を取る。そのあと1分毎に10秒の撹拌を規定の時間まで続ける。一回の撹拌が終わるたびにまた気泡を取るために叩き、タンクを桶に戻して現像液の温度が変わってしまわないようにする。
たとえば10分30秒だとして、撹拌が終わるのが10分20秒時点。タイマーを確認しながら、次は9分30秒から撹拌を開始。という風に続けていくと分かり易い。好きな音楽をとかを流してるとすぐ終わる感じがしてよい。おれはノボアズの新譜を鳴らしながら撹拌していた。カッケ~。

5. 停止処理
現像液をビーカーに排出して、すみやかに停止液をブッ込む。だいたい45秒くらい撹拌してから、停止液は捨ててしまう。現像液は疲労がくるまではまた使えるのでとっておく。

6. 定着処理
停止液をぶち込んだ時点で現像は停止している。あとはそれを定着させるために定着液をブッ込む必要がある。
定着液を入れたら、まずは30秒連続で撹拌して、以降1分毎に10秒の撹拌を3分間続ける
おれは初回よくわからなくて、現像とまったく同じ手順を繰り返した。それでも決して問題は無いと思う。時間が短すぎるときっとヤバいことになる。
定着液もある程度使いまわしが効くので、処理が終わったらビーカーに戻しておく。

7. 予備水洗・水洗促進剤の投入
定着処理が終わったら、まずは45秒水道水で水洗。なんか薄紫色の水が出てくるのでビビるかもしれない。
そのあとタンクの中にQWをカチ込んで1分間何もせず放置。

8. 水洗
QWは捨てよう。その後は水道水を注ぎ、10回撹拌して排出、10回撹拌して排出、を5分くらい続ける。

9. 水滴防止剤を入れる
水洗が終わったら、ドライウェル溶液をタンクの中にぶち込んで1分放置。

10. 乾燥処理
タンクを開けてフィルムとご対面。思えば長かったよな?ダークバッグの中に入れてからというもの、フィルムを日の下に晒すのはあれ以来だもんな。感慨深えよ。
タンクからリールを取り出して水滴を払い、タンクもさかさまにしていらない水を捨ててしまおう。
それからドライウェル溶液をぶち込んで30秒放置。

勝ち。
乾燥させる場所は、風呂に入った後の風呂場が良い。理由としては、湿気がこもっていて埃が空中に浮いていないから。デリケートなフィルムは埃を嫌う。
どのくらい乾燥させておけばいいのか、という問いに対しては、おれはとりあえず一晩と答えておく。寝る前にこれをやっておいて、朝に回収するので十分だと思う。本当は2,3時間でいいのかもしれんけど。

結果

正直言って、上手くできてるのかどうかは分からない。でも見たところどのコマにもムラや傷みたいなのはいってないし、亀の写真なんかはコントラストが効いてて最高だと思う。いいねえ。

*** *** ***

自家現像、とにかく楽しい。感動がヤバい。コスパとかいろいろ考察する余地はあるんだろうけど、今はまだこの全能感に寄っていたい。シャッターを切ってから自分の写真をその目で見るまで、こんなにたくさんのプロセスを踏まなければいけないということに浪漫を感じる。願わくば、スマホでパッと撮ってシャシャッとインスタとかに上げちまう写真とかより、なんかこうゲイジュツ的な要素が加わってくれてたらうれしい。